●10/28 UN “End Of 1st Save” @LIQUIDROOM ebisu


大江慎也の新バンド、UNの1stアルバムレコ発LIVEはなぜかツアーではなく東京ONLYのワンマンLIVEでした。別に「LIVEの本数は極力少なく、飢餓感をアオって・・・」なんて変な商売目的ではないとは思いますが、せっかくルースターズの再結成を経て、華々しくUNをデビューさせたわけですから、東名阪福くらいはツアーしてほしいなぁ、と思うんですが・・・。Dr.の鬼平氏はJukeJoitの仕事があるし、Gt.の鶴川氏も福岡でブティックの店長やってるというウワサなので、なかなかスケジュールの都合がつかないのかもしれません。

アルバム1枚しかリリースしていないためか、実際のショウ・タイムは80分弱で、さすがに短いかなとは思いましたが、変にルースターズ・ナンバーやコテコテのブルースのCoverでお茶を濁したりは一切無く、しみったれたルースターズの幻影を完全に断ち切っていたのが良かったです。

アンコールでただ1曲、披露された旧曲の“Mona (I Need You, Baby)”にしても、ルースターズのヴァージョンはもちろん、Bo Didleyによるオリジナルとも全く質感の違っていて、ドラムのオカズがグルーヴを引っ張ったパーカッシヴなアレンジで、なんだかTalking Headsをイメージしてしまいました。

そして何よりも印象的だったのが大江氏のギターです。実は、個人的には大江氏はヴォーカルよりもギターが凄いと思っているのですが、今回のLIVEでもその腕は健在でした。

ルースターズ結成前、Sheena & The Rokketsの鮎川誠氏が大江氏のギターの腕前を大絶賛していたという話しがありますが、あの「鋭い、シャープな」というよりは「大味」とでも形容したくなる独特のカッティングでザクザク押していくあのスタイル、あるようでなかなか無いと思うんですよ。

Mick Green、Wilko Johnsonを筆頭に、田中一郎、藤井一彦アベフトシなど、リズム命のカッティングが売りのギタリストは大勢いますが、激しいやつから繊細なトーンまで自在にダンサブルな音を矢継ぎ早に出し、武器で言うなら「マシンガン」というイメージの方たちで、理屈上、系統立てて考えるなら大江氏もこの流れに入るわけですが、全くと言っていいほど、そんな雰囲気がしない。

むしろ、大江氏のギター・スタイルを武器に例えるなら、「鉈」とか「戦国時代の大砲」みたいなものを思い浮かべてしまうくらい、重くて破壊力抜群のカッティング・ギターではないでしょうか。Eric Claptonモデルのストラトを使用していましたが、レスポールのようなへヴィで重みのある音が出ていたのが印象的でした。


そういうわけで、大江氏の復活としてはもちろん、バンドの音としても非常に将来が楽しみではあるのですが、その一方で、思うところがないわけではありません。

ALTERNATIVE MUSIC

−もうひとつのとか、既存にない音楽という意味で、すでに知られた言葉でもありますが、自分がこれからの音楽活動をする上で信条としている言葉です。「UN」とは、基本的にそれを受け継いで生まれたバンドです。フランス語で「あるひとつの」という意味をもち、

      (中略)

これからやっていきたいさまざまな表現活動としての意味も、よく含んでいると思っています。私は周囲の環境や良きブレーンに恵まれ、これからも活動を続行していきたいと考えています。色褪せることのないものをやっていければと思っています。

2004.03
大江 慎也


TEXT From UN“KNEW BUT DID NOT KNOW”リリース告知フライヤー


UNの1stアルバムリリースに際しての大江氏による宣言文ですが、「あるひとつの」という部分へのこだわりを強く感じます。しかしながら、アルバムの音・LIVEでの演奏、どちらにしても別段、オルタナティヴだったり、前衛的だったわけではありません。むしろ、ルースターズの原点であった「最新型だけどオーソドックス」という概念を継承したものと読み取ってさしつかえないでしょう。

70年代から80年代への転換期、パンクの嵐がひと段落し、その精神性がニューウェイヴへと受け継がれていた時代、ストーンズはゴミ扱いされ、ビートルズは全盛期の遺物も同然とばかりに時代を象徴するアーティストが、それより上の世代を一刀両断にぶった切ってイキがってた、そんな時代にルースターズはブルースへの愛情を包み隠さず、それでいてパンキッシュな独自のRock'n'Rollを提示していました。

ですが、この2004年の現在には、ZAZEN BOYS東京事変、ROSSO、モーサム175R、銀杏BOYS、Glayラルク等、ミクスチャーなオルタナティヴ・ロックルースターズ直系ロッキン・ブルース、明るく楽しいよい子のパンクもどきまで、ありとあらゆる音楽が並列的に存在しているのです。

そのような状況下、何を持って“最新型”と定義できるのか、
本流も傍流も関係ない中で、何が“オーソドックス”なのか?

70年代末、日本において、ロック・ミュージックは未成熟であったためアーティスト・ジャンル関係なしに“歌謡曲”“芸能界”という共通した仮想敵が存在していましたが、大江氏が病気で音楽シーンからリタイヤしていた90年代、それらの共通認識はずいぶん曖昧になり、音楽性は細分枝葉化され、あらゆる音楽が平行してムーヴメントを形成している状態になりました。

00年代のJ-Rockは××のジャンルだった!なんて画一的には言えないわけで、その中で“最新”と“オーソドックス”というキーワードはもちろん、“あるひとつの”を有言実行していくのは80年代のように簡単ではないのは間違いありません。

今回の1stアルバムはヘヴィなギターロックだったわけですが、今後、どのような音がこのUNから出てくるのか?ルースターズのように、予想のつかない音楽性の転換が連続するのか?それとも、よりブルースの道を極めんとするのか?

大江氏の宣言文が実現されるかは、これからの音にかかっていると思います。実に楽しみです。



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<参考LINK>

●UN Official Site http://columbia.jp/un/
The Roosters(z) Official Site http://roosters.jp