●7/8 Soul Flower Union “『ロロサエ・モナムール』発売記念日本ツアー(其の一)” @渋谷 DUO Music Exchange
Soul Flower Union “ロロサエ・モナムール” (ASIN:B0009OASR2)


ソウル・フラワー・ユニオン待望のフル・オリジナル・アルバムがついにリリース!その発売に先立ち、そのお披露目ツアーが敢行されました!!

・・・とはいっても、ソウル・フラワー・ユニオンって基本的に新曲ができたらすぐにライヴで披露して、どんどんアレンジを磨いていくという手法で楽曲を完成させるバンドだけに、ニュー・アルバム収録曲の13曲(インターミッションの“アル・ファジュル・フローズン・ブラス”は除く)のうち12曲は、この2年間のうちに既にライヴでは何度も披露、定番化すらしているという有様(笑)。“パンチドランカーの夢”にいたっては、2001年、ヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーションのツアー時から演奏されていたわけですから、5年間の長期熟成モノと言えるでしょう。むしろ、作品としての完成形を披露するツアーという意味合いが強かったように思います。(とはいってもリリース後もアレンジに手が加えられる楽曲もあるでしょうし、まだ、終わりのない中間到達点であります。)

さて、今回のアルバムですが、実に完成度の高い、ソウル・フラワーの魅力を凝縮したアルバムに仕上がったと思います。(パンク+レゲエ+スカ+ブルース+ジャズ+歌謡曲中川敬=面妖・摩訶不思議な唯一無二のB級ロックンロール、という感じでしょうか?

相変わらず、節操が微塵も感じられないくらい様々な音楽を演っているのですが、ソウル・フラワーの何が特徴的かって、そのどれもが同一的質感、強烈なトータリティとしてまとめられている点です。

“松葉杖の男”のユルいレゲエ、“零年エレジー”のシブいブルース、往年の名曲を連想してしまう(!?)“不死身のポンコツ車”の昭和歌謡曲テイスト・・・具体例を出したらキリが無いのですが、その全ての楽曲において「本格派」な感じが全くしない!むしろ、抑えても、抑えても、にゅるにゅると噴出してくる中川敬の“天下一品こってりスープ”ばりの濃厚さが全てを包み込んでる感じです。これこそがソウル・フラワー・ユニオンの真髄であり、唯一無二のオリジナリティの源泉であると言えます。

じゃあ、他のメンバーには魅力がないのか、っていうと全く逆で、ところどころに実にカッコイイ見せ場があるから侮れない。“零年エレジー”の河村氏によるスライド・ギターはブリティッシュ・ハードロックなんていうソウル・フラワーでは全く出てこなかった要素が光っていたし(そういえば河村氏、The Newest Model加入前はHR/HMバンドのギタリストだったんだっけ・・・)、オクノ先生はプリミティヴなロッキン・オルガンをガシガシ弾いていたと思ったら、突然細身魚氏ばりの悶絶変態シンセのSEが飛び出したり(特に“神頼みより安上がり”、楽曲イントロ前のSE)、ばりばりに個性が出ているのがまた素晴らしい!また、ゲスト・ミュージシャン陣もモノノケ・サミットから中西智子・樋野展子、HEATWAVE山口洋、桃梨・上村美保子といったいつもの内輪な方々(笑)はもちろん、今回はBlack Bottom Brass Bandなんかも参加しており、なかなかに豪華で楽しめる内容になっています。

それに、ブックレットには歌詞・ライナー・ノーツだけでなく、その英訳も付いているのですが、これには本気で海外の人々にも自分たちの音楽を発信していこうという強い意志を感じました。
たとえば、尾崎豊なんかが日本語の楽曲タイトルとは別に英語のタイトルと歌詞の英訳を付けたりしていましたが、これがデザイン性以上の意味合いをほとんど持っていなかったのに対し、“Chin-chirorin: A gambling game that drunks play by throwing dise.”だとか、日本人以外にはわからないであろう歌詞の言葉を説明したり、その言葉の背景にある日本独特のカルチャーを説明していたりするなど、「正しく伝えよう」というコミュニケーションの意思を感じるものになっています。


このように、実に彼らの魅力が詰まったアルバムなのですが、これがライヴになると、またその色合いが強まると言うか、各個人の個性が際立つんですよ。アルバム完成後に作られ、RYUKYUDISKOに提供された新曲“マジムン・ジャンボリー”が演奏されたのですが、沖縄音階に三線をフィーチャーしたアレンジで、それこそThe Boomあたりが演奏したら「いかにも」って雰囲気になりそうな曲なのに、やはりそれをソウル・フラワーが演ったら、トラッドとも最新鋭とも違う、我が道を行くかの如き雰囲気のナンバーになってたし、追悼でしょうか、久々に演奏された高田渡氏の“自衛隊に入ろう”のCoverはオリジナル以上に「おちょくってる感」を感じる名カバーだったと思いました。

ただ、ビミョーに難クセつけるというか、所属事務所のブレスト音楽出版にお願いをするならば、東京のライヴにもSAX・樋野展子サンを参加させてほしい、つうこと。

私、今年の春にトーキョー・シティへ引越し、在京関西人と化したわけですが、東京でソウル・フラワーのライヴを観ていてイチバン気になるのが樋野さんの不在。2004年10月03日付のエントリーでも書いたのですが、オクノ先生のシンセのみでもカッコイイのだけれども、樋野さんのSAXがそれにユニゾンで加わると、鉄壁の厚みと音の広がりが出てきて実にキモチイイ。JIGEN氏の見せ場である“秋田音頭”なんか、三味線風音色の変態ベース・ソロに樋野さんのアヴァンギャルドなSAXが絡み合って実にヴィヴィッドな雰囲気で凄いんですよ。関西にいた頃はそれでガンガンに踊ってたから、その強烈なイメージが耳の奥にずっと残ってて、どうもオクノ先生のシンセのみでは寂しい感じがしてしまうのです。

そりゃあまあ、こちとら(一応)社会人なワケですから、ただでさえ大人数のバンドなのに、加えてメンバーが一人増えるだけで、新幹線往復3万円、ホテル一泊1万円、楽器の運送費にピンマイクやモニター・スピーカーのレンタル代が、打ち上げの飲食費も・・・てな具合にけっこうな経費がかかるのもわかるので「××してくれ〜」なんて軽々しく口にはできないのですが(←おもくそ書いてるやんけ)、いっぺん、樋野さんはもちろん、現在東京のみ参加している上村美保子さん、ヒデ坊&ドーナル・ラニーうつみようこ大熊ワタル、高木太郎、山口洋・・・挙げたらキリが無いですが、誰一人として欠けていない、オールスター・メンバーでライヴを観てみたい。「ユニオン」だけに、バンド的な、強固な連帯感というよりは出入り自由なアバウトさを標榜しているわけですが、その一方で、ライヴを観ていて「ああ、ここに誰々がいたらハマるだろうな〜・・・」とか思うことがしばしばあるんですよ。そういう意味で、一度関係者全員が一堂に会した最高のセッションを観てみたいのです。

その実現の第一歩はやはり、CDを買う友人を誘ってライヴへ行く利益率の高い(笑)Tシャツを買うアーティスト本なんかも買っちゃう会報誌なんかも定期購読しちゃったり・・・、etc、バンドに金を落とすことでしょう。

言い方は悪いですが、自転車操業のインディーズ・アーティストにとって、活動資金は実に重要な要素です。これがあるだけで、“ヤリタイコト”の実現度合いが大きく変わってくると思います。これはソウル・フラワー・ユニオンのみならず、全てのミュージシャンに共通して言えることだと思います。もし、この漫文の読者の皆さんがソウル・フラワーのライヴを楽しんだのなら、是非物販ブースに立ち寄ってくれることを切に願います。




   -----------------------------------



<参考LINK>

●魂花時報 Soul Flower Union 公式WebSite http://www.breast.co.jp/soulflower/
●〜深海魚は松の木のてっぺんに登る〜 樋野展子Blog http://sound-bath.way-nifty.com/days/