ビートルズは眠らない / 松村雄策 (ISBN:4947599898)

“Rockin' On”やCDのライナー−・ノーツに掲載された松村氏のビートルズに関する評論集・・・というよりエッセイ集ですな。徹底的にファンの立場からホメたり苦言を呈したりしている所がよい。むしろ、ビートルズで変わってしまった自分の人生を語っているかのように思う。でも、それがオタクのよくやるようなアイテムの固有名詞でアイデンティティーを表現することになっていないのは(元・失礼!)ミュージシャンであり、小説家であるという表現者としてのプロフェッショナリズムなんだろうな。

僕はビートルズは本当に代表的な作品しか聴いてないんだけど、村松氏や相方の渋谷陽一氏ほどラジカルにはなれなかったけど、同じくRock'n'Rollで生き方が変わっちゃったおバカな臆病者とナルシストの有機化合物の俺としては、なんだか非常に身につまされながら読み終えたのでした。



●「おたく」の精神史 1980年代論 / 大塚英志 (ISBN:4061497030 )

あえて断言。この本は完全な後出しジャンケン。個々の論は当然異なっているんだけど、このテーマを論じるからにはそれが正しいか、そうでないか、むしろ、必要かどうかは置いといて、浅羽通明先生を論破しないことには評論として「面白い」ものにはなりえません・・・と、浅羽通明氏の“大学で何を学ぶか”を読んで大学へ進学することを決意したバカな俺は思ったのでした。(でも、この“大学で何を学ぶか”、就職活動を開始してから読み返してみると、イヤっちゅうほど大学生であることの意味を考えさせられますなあ。この本は間違いなく僕の人生に最も影響を与えた書だと思います。大学に入ってからは徹底的に遊びっぱなしだったので思想らしきモノの方面はとんと縁遠くなってしまったのですが、現在、浅羽先生はどんな活動をしてらっしゃるのでしょうか?)



●ハイスクール1968 / 四方田犬彦 (ISBN:4103671041)

この本もまた俺が最もヤられるジャンル、青春時代系エッセイですな。ひきこもりな高校生活を送っていたため、このような「青春・オブ・青春」のエッセイにとっても弱いのです。でも、この本に関しては正直言って閉口。バカ・賢い関係なしに、綴られている四方田犬彦がやったアクションの行動原理に「エロ」の視点がこれっぽっちも書かれていないのがムカっときます。一応、あとがきでその理由について「社会の雰囲気を明確化するため」と述べられているのですが、そんな事言うなら個人的体験を一般化して社会評論するんじゃない!と言いたい。村上龍中島らもなども同世代、かつ、同テーマの小説・エッセイを発表しているが、そのどちらもが「エロ」を行動原理としていたことを明確にすることで描き出される風景がリアリティを持ち、そのリアルが当時の筆者の周囲の社会までもを信憑性を持たせたのかなー、と思う。

そういや、その村上龍 / 69 が宮藤官九郎脚本で映画化だそうな。おいおい、ホンマにできるんかいな?クドカンは80年代の生理感を上手に21世紀で映える形に仕上げるけど、60年代末の生理感なんぞ、持ち合わせちゃいないだろうに・・・。とっても失敗しそうな予感。