日曜の朝、たまには早起きして・・・

僕はあまり漫画を読まないのだが、それでも贔屓にしている漫画家が何人かいる。その中の一人が水木しげる氏なのだが、先日、氏の代表作である“ゲゲゲの鬼太郎”がリバイバルで再び地上波TVアニメ化された。なんと今回で通算5度目のアニメ化であるとのこと。別に鬼太郎マニアとかではないのだが、幼少時に第3期アニメ(80年代版)の直撃弾を喰らって水木氏の思想のさわりに触れた者として、21世紀のキッズ達にもその面白さが伝わることを願ってやまない。・・・というわけで、たまの早起きついでに観たのだが・・・
うーん、アニメはキッズ達のためのものであって、別に「水木思想が全く表現されていない!」「鬼太郎が本来持っていた毒が全然表現されていない!」なんて、妙な作品論をぶつつもりは毛頭無いんだけど・・・猫娘が・・・今風の「萌えキャラ」になっているのには腰が抜けた。
いや、確かに僕の鬼太郎原体験である第3期アニメの黒髪おかっぱ頭・赤のワンピースというキャラクター造形(一般的にイメージされているあの造形)が2007年の現代でも普遍性を持ちえているか、と問われたならば、残念ながら否定せざるを得ないだろう。「今時、そんな奴ぁいねえよ!」ってなもんである。70年代のオリジナルをそのまま現代に再現する、というコンセプトでもない限り、デザインを変えることを否定する気はない(そもそも、猫娘が原作の貸本版“墓場鬼太郎”で初登場した時のデザインからして70年代の造形とは大きく異なっている)。しかしながら、水木マンガの個性である、点描による濃密な作画とラフでシンプルな作画の融合した風景の中に「萌え」という要素は見るからにマッチしていないのではなかろうか。アニメは原作の作画とは全く別物、統一のトーンで均質化された世界であるとはいえ、明らかにあのデザインは異質性が強すぎる。もっと言えば「そんな、あからさまに“大きなおともだち”対応をしなくても!」って。顔つきがいくら今風でも、髪の色をもっと大人しい色にするだけで、ずいぶん作品世界になじみそうな感じはするんだけどなあ・・・・
ついでに、当ウェブサイトは音楽評論を(一応)標榜する漫文であるからして、音楽的なところにも触れておこう。ゲゲゲの鬼太郎主題歌といえば“ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ〜♪”というアレであるが、90年代、第4期アニメ化の際、あの曲を演奏したのは何と憂歌団(!)である。例のイントロを内田勘太郎氏の生スライドギターが奏で、木村充揮氏が、あのキー高めのダミ声で“ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ〜♪”とやるのである。「ハマる」とはまさにこの事だ。当時のJ−POPは売れっ子アーティストがタイアップありきで音楽が制作していた時代。そんな状況下で、マーチャンダイジング度外視で憂歌団を起用したスタッフのセンスには完全脱帽。あまり知られていないが、間違いなく90年代を代表するCoverである。
で、今回のアニメ化における主題歌である。例の唄が引き続き採用されているのだが、アレンジが大幅に変更されている。なんと今回はブラスセクションとクリーントーンのギターカッティングをフィーチャーしたファンク風アレンジである。・・・何をかはいわんや。“ルパン3世”よろしく、ジャズだのボサノヴァだの、様々なアレンジでコンピ盤作って・・・なんて、広告代理店の皮算用が見えなくもない気がする。でもまあ、このあたりに関してはそれほど心配はしていない。商品性を拒むかのごとき濃厚な毒、売れるのではなく歌い継がれる普遍性を確実に宿した楽曲なのだから・・・