布袋寅泰町田康を暴行、書類送検へ−・・・・

この夏、一番の驚きのニュースである。
もちろん、この漫文の過去ログを読んでいただければわかるように、自分は布袋氏・町田氏双方の大ファンである。布袋氏の鳴らす音に込められた喜怒哀楽、あるいは「祈り」とでも言いたくなるようなスピリチュアルな波動はまさに自分の魂を心から震わせるものであるし、町田氏のガチョウの首を絞めたような叫び声からも、それと同質のものを感じている。

町田康布袋寅泰中村達也で新バンド結成ー・・・そんな噂が流れ始めたのは何時頃だっただろう。この話を聞いた時は期待半分、半信半疑半分といった感じであった。布袋氏は数年前よりソロ活動よりもバンドに軸足を移したい旨を発言し続けていたものの、あまりパーマネントなバンドを継続維持できるような性格でもないだろう。ましてやお相手はあの町田町蔵である。町田氏にいたっては同じバンドを2年以上継続したためしが無いのではなかろうか?INUや北澤組はもちろん佐藤タイジとのユニットは大喧嘩の後の別れと聞いている。最近では町田康グループのベースだった西村雄介氏がギャラの不払いについて自身のBlogで大激怒していた。中村氏にしても、Frictionをはじめ多数のバンドを掛け持ちしている中、活動時間を捻出できるのか?という疑問が湧いてしまう。
まあ、結果から見れば、その悪い予感は見事的中したわけで・・・。

だが、決して自分自身は件の事件のことを「悪いこと」だとは思っていない。
むしろ、この件の第一報が報道された時、自分は嬉しかったのだ。何がって、布袋氏にしろ町田氏にしろ、きちんと自身が表現したい明確なテーマがあり、互いに譲れなかった、という事実である。

町田氏は自身の肩書きを「パンク歌手」としていても、作家としての表現活動にだって重きを置いているわけで、連載も持っている。そこから時間を捻出して音楽活動を行っているのだ。布袋氏の思い描くパーマネントなバンドは難しいだろう。
片や布袋氏の立場からすれば、BOOWYがそうであったように、パーマネントなバンドを名乗る以上は単発的なライヴではなく、きちんと日本全国をくまなく回るツアーを行い、バンドとしての音をガッチリ固めたいと思うだろう。それは音楽家として誠実な望みであると言える。
このあたりの意識がズレていたのだろう。町田氏は布袋氏の理想(を具体化したツアースケジュール等)を「商業主義」と曲解して断罪し、今回の件となったと推測される。
つまり、「どっちが悪い」とかいう単純な問題ではなく、結局、布袋氏・町田氏にしても「ヤリタイコト」が明確に存在し、それは背反するものであった。そして、「大人」としてシャンシャンと現実的な解決して中途半端に手を打つのではなく、互いに表現者として理想を追い求めて譲らず、その結果としてハッキリと決別したのである。

ラジオ番組“サイキック青年団”で北野誠氏がこれを評して「両雄並び立たず」と発言したが、まさしくその通りである。どっかの芸能ワイドショーでオバサン相手に適当なことをしゃべくってる脂ぎったワーカホリックの司会者は「音楽性の違い?そんなのどうでもいいよ!」なんて言っていたが、全くもってどうでもよくない。表現者の理想と理想のせめぎ合いである。ババアの電話相談に説教ともご機嫌取りともつかない内容の無い回答をおもいっきりカマすだけの爺に、この件の深い背景や重要性など理解できるわけもないのだ。死んでしまえ馬鹿野郎!!
クドくなるのでこれ以上はアレコレ書かないが、マスコミ連中の報道は本当に酷かった。布袋氏・町田氏共に広義の“芸事”を生業としている以上、スキャンダルも仕事のうちではある。あること無いこと含めゴシップ報道が成されるのは仕方ない。しかし、なぜこの一件が起こったのかについて、核心に触れた上でネタにした記事が全く存在していなかったのには驚いた。“芥川賞作家”“元BOOWY・過去にミリオンヒットがある歌手”という肩書き以上には当事者の内面には、ついぞ触れられていないのである。特に町田氏に対する記述が酷い。氏の著書の一冊も読んでいないのであろう。滅茶苦茶な狂気を内包している町田氏のパーソナリティには一切触れずに“芥川賞を受賞した文豪、とにかくエラい存在”としてしか描かれていない。そういった意味では、町田氏自身がこのトラブルに対する手記を芸能誌に寄稿したことは、その信憑性や個人対個人の喧嘩としてはどうかと思うものの、妙な方向へ転がっていった野次馬報道の軌道修正という意味で適切であったと言える。


今回のツアーメンバーが発表された。非常に驚くべき布陣である。ドラムス、中村達也(ex. Blancky Jet City)。ギター、TAKUYA(ex. Judy And Mary)。ベース、JU-KEN(ex. Gacktのバックバンド)。キーボード、森岡賢(ex. SOFT BALLET)。パーカッション、スティーブ衛藤。それぞれに才能があり、各個人でもメインを張れるだけの凄いメンバーだ。

・・・正直言って、相当に不安である。布袋氏はこのメンバーでバンド・マスターとしての職務を全うすることができるのであろうか?はっきり言って、クセの強い・かなり強く“自分自身”を前に出す人間ばかりが揃っている。

中村氏は当初の噂通り、布袋氏と意気投合したということなのだろうが、町田氏と同様、かなり多忙なのは間違いない。自身のロザリオスはもちろん、ここ最近は新生Frictionがかなり活発・絶好調に活動中である。その上、さまざまな一発限りのセッションも多い。今回の布袋氏のツアーのように、ガッチリ長期に渡って拘束されるような仕事はやり遂げられるのであろうか?最初はともかく、ツアー中にスケジュール調整がままらなくなり、「穴を空ける」とまではいかなくても、他のセッションも含めて中途半端な結果になったりしないだろうか。

TAKUYA氏は、ある時・ある瞬間、突然音楽的な事で布袋氏と大喧嘩してしまったりしないだろうか?Judy And Mary解散の経緯を思い出してほしい。TAKUYA氏と恩田快人氏がバンドの主導権を争いつつある中で、世間的な注目はYUKIに対する「カワイー!」とか音楽とは異なったところでの評価ばかり。自身の音楽が正当に評価されない状況にキレたがゆえの崩壊である。今回の布袋バンドでも似たようなことが起こったりはしないだろうか?いくら元Judy And Maryでも、観客の視線はまず布袋氏に行くし、メインのギターソロを担当するのも布袋氏、楽曲のアレンジだって布袋氏がほとんど決めてしまう。かと言って、自身のキャリアと立場としては、バックバンドのその他大勢の一人として機械的に譜面どおりの演奏をすれば良いわけではない。お仕事以上・バンド未満の難しい立ち位置に自身の存在を落とし込むことができるだろうか?Judy And Mary時代のYUKIとの関係性を考えると・・・?

JU-KEN氏はここ数年、布袋氏のバンドでベースを務めている実績はあるものの、このメンバー中においてはネームバリュー・演奏スキル共に相当見劣りするのも事実である。現に、今回のアルバムに参加したミュージシャンのクレジットに彼の名前は掲載されていない。個人的な印象としては、これまでの布袋バンド内におけるキャラクターは、出音で勝負というよりは、ステージ・アクションやルックスでライヴを盛り上げる存在だったのかなと思う。これまでの布袋バンドは基本的に職人肌のミュージシャンが目立つことなく布袋氏の意図する音をビシっとキメる、といった雰囲気であった。それゆえに彼の存在は稀有なものであり、バンドに新しい風をもたらしたのは間違いない。しかし今回はどうだ?見た目的なところでは中村氏とキャラがかぶっている。ステージ・アクションにしてもそうだ。このメンバー内で彼が立ち位置を見つけることができるかどうか・・・不安だ。

森岡氏も布袋のサポートメンバー経験者ではある。しかし、“Tokyo Inter Live '95 Cyber City Never Sleeps”という2公演限りのライヴで、(布袋氏との)ツアー経験はない。しかも、そのライヴの時点とは布袋バンドのキーボードに求められる役割が根本的に変化しているという事実がある。森岡氏が布袋のサポートを勤めた当時、キーボードはいわゆる“鍵盤楽器演奏者”としての役割であった。デジタルピアノ・シンセ音源でのオルガン・・・鍵盤楽器でバンドの出音に広がりを持たせ、ハーモニーを付けるのが至上命題。しかし、"Supersonic Generation Tour"でワタナベノブタカがキーボードで参加してからはその役割は大幅に変化した。鍵盤楽器奏者というよりは、布袋氏の意図するところを寸部違わず忠実に解釈し、バンド全体をコントロールするマニュピレーターとしての比重がほとんどを占めるようになった。その役割の最たるものが“Fetish Tour”〜“Super Soul Sessions”まで、かなりの長期にわたってマニュピレートを務めた岸利至氏である。アルバム制作時点から一貫して布袋氏をフォローし、ライヴではアイコンタクトで布袋氏の指示をキャッチし、それを受けた岸氏が基礎となる音源をマニュピレート、それをガイドとすることでバンドが走っていく。サッカーに例えるならば単身フォワードの布袋氏、ミッドフィルダーの岸氏、その他を固める各メンバー、という立場であろう。過去の布袋バンドでは布袋氏がFWとMFを兼任していたようなもの。岸氏が実質的な司令塔となることで、布袋氏はFWに専念、大暴れする体制が確保できていたわけだ。このような、長い時間をかけて到達した岸氏のポジションを森岡氏が務めることができるか?森岡氏が司令塔として機能しなければバンドは成立しないのである。

ティーヴ衛藤氏はGuitarhythm IのライヴやComplexの解散ライヴでサポートを務めていた。出音的には中村氏のアヴァンギャルドな出音とマッチングしているし、かなり良い組み合わせであるのは間違いない。ただ、しかし・・・やはりスティーヴ衛藤氏はポップ・ミュージックではなく芸術表現のフィールドで活躍する人物である。そういった意味では他のメンバーとの間に溝が存在していると言える。


長々と書いてしまった。このように、非常に豪華なメンバーである反面、ちょっと想像するだけでも不安要素が多い。ヘタをすると、ツアー中にメンバーが脱退してしまいかねない予感すらしてしまう。
でも、確かに布袋氏の新作“Ambivalent”のコンセプトを体現するメンバーであることは間違いない。やみくもにネームバリューで召集したメンバーでないことは確かだ。布袋氏には勝算があるのだろう。小生の予想を大幅に覆す、とんでもない音が出てくる可能性は十分に秘めている。そういった意味で、中途半端に演奏が固まったツアー中盤戦ではなく、何が飛び出すか全くわからない「ツアー初日」は是非とも観たい!!
・・・というわけで、これを書いているのは10月26日、ツアー初日。うまいこと業務を調整して会社を休むことに成功した(笑)!!今からその歴史的瞬間を目撃すべく出かけるところである。予想を裏切る強烈なロックンロールか、はたまた予想を超えるほどにバンドの体をなさないショボい音になるのか・・・。

今日の市原市民会館、来週の東京厚生年金会館2DAYS。できるだけ速いうちにレポートしたいと思う。乞う、ご期待!