何やらルースターズの事を書いたらみょーにアクセス数が伸びるようなので、今回もルースターズネタで書いちゃうよ(笑)ほんとは、書きさらしのネタをブラッシュアップするのが面倒なだけなんだけど。フジロックで観たバンドの感想も全部書ききってないしなー・・・


● 8/25 “SMILEY'S SUMMER JAM”(下山淳・花田裕之) @下北沢Club Que

つい先日のフジロックでは大江慎也の復活が焦点となったわけですが、その影で、目立たないながらも重要な活動をしていた人がいます。まず、花田裕之。ギタリストに専念してLAST LIVEのステージに立っていましたが、フジロック直前にニュー・アルバムを発売、ソロとして重要な時期でした。そして、下山淳。Smash日高氏の話によると、このLAST LIVEに数曲ゲスト参加するという話だったようですが、各所BBSで「下山はいらない」というミもフタもないファンの声に応え、オリジナルを尊重する形で退いてくれました。その2人が、この夏を締めくくる対バンイベントを行うということで、行ってきました。

先攻は下山淳だったのですが、今回のイベントに限り、普段のソロ活動とは大きく趣向を変えてきたのには驚かされました。Ba.は元RIZEAJICOLOSALIOSのTOKIE、Dr.は忌野清志郎など数々のミュージシャンのバックバンドを担当した湊雅史、ゲストという形ではあるが、うつみようこがVo.というパーソネルで便宜上“SYMPHONY OF DESTRUCTION”というバンド名を名乗り、(ちなみに、ご本人達はこの名前を覚えていませんでした。苦笑)下山氏はギターに専念、バンマスとして各メンバーに指示を飛ばすグレイトフル・デッドのようなスタイルのジャムバンドでの出演でした。下山氏が目で合図した各メンバーがソロを取っていき、うつみようこは「う〜、や〜、た〜!」って叫びまくるだけで"歌(?)はナシ、最後は下山氏がギターでキメる、っていうスタイル。

しかも、下山氏は「花田裕之バンドの前座で〜す!あとン曲で〜す!」ってMCしてるし、うつみようこは「あのー、わたしゲストちゃうん!?」とか喋ってるし(笑)

そして、うつみようこが「ここからベタな世界になります」ってぼそっと呟くと、突然、コテコテのブルース系ハード・ロックのCoverとなり、下山淳の追っかけギャル(死語)ですらボー然とさせて、すーっとステージを去っていきました・・・。

当然、名うてのミュージシャンが集まっただけあって、演奏は本気で物凄かったのですが、いわゆる下山淳の活動をイメージしてたら肩透かし、とはまた違うんだけど、ただただ驚くばかりで。あれは一体全体なんだったんでしょうか?

バンド全体の感想としてはこんな感じなのですが、各パートとしては、Ba.のTOKIEの音が非常に良かった!アップライト・ベースでスラップする曲ではいまひとつ低音が響いてこなくて下山氏がコントロールするリズムと比べると、すこーしばかり前のめり気味なのがバレバレになっていましたがエレキ・ベースの指弾きが死ぬほど良くて、フレーズの輪郭と低音の広がりがバランス良く両立していて、レッチリ風のペケペケ・リズム重視型か、丸いぼわーんとした雰囲気で勝負する音、のある意味二極分化気味のイマドキのベースの音において、いそうでいない、意外と珍しい感じの出音がカッコよかったです。LOSALIOSRIZEともに未聴だったので、完全初体験だったのですが、今後の活動、かなり注目したいと思います。

あ、余談ですが、LOSALIOSのDr.の中村達也氏(ex. BLANKEY JET CITY)が観に来てましたヨ。


さて、図らずともメイン・アクトとなってしまった花田裕之バンド、花田裕之(Vo./Gt.)、井上富雄(ba.)、椎野恭一(Dr.)という御馴染のメンバーにサポート・ギタリストとして大西ツル氏(from Magnolia、椎野恭一氏のバンド)という編成の自称名“Blues Rabbit”(柴山俊之氏のBlues Lionへの対抗?)ですが、こっちは誰もがイメージしていた通り、花田氏の新譜“Nowadays”の音を完全に再現する、雰囲気のあるスワンプ・ロックを披露してくれました。

そのニュー・アルバム“Nowadays”についてですが、それ自体の感想は私も同感のid:noraoff:20040821“Welcome to NoRaNeKo OFFICE!”さんを参照していただくとして、それとは別に私個人が感じることがあるのです。

最近の花田裕之氏の音源リリースに関して、間が悪いというか、どうも花田氏の創作バイオリズムと周囲の環境が不整合というか、いまひとつかみ合ってないような気がしてならないのです。

今回のアルバム、「意欲作」っていう感じではないのだけれども、非常に花田氏らしい、充実した内容の良いアルバムにもかかわらず、やはりと言うかなんと言うか・・・誰もが待ち望んでいたルースターズの再結成に話題を全部持っていかれてしまって、これでもか、ってくらい地味でぞんざいな扱いを受けてしまっているんんですよ。例えば、新宿LOFTのフリーペーパーでのインタビューだとスペースの半分はルースターズの話題、このアルバムの関する話においても、ルースターズ初代Ba.でもある井上富雄氏との関係性への言及が大きく扱われていて、現在の花田氏個人によるアルバムの意味づけや心境については、無視とは言わないまでも、置き去りにされている印象は拭えません。

前作“Nothin' On”の時は、ROCK'N'ROLL GYPSIESの実質的1st、“Who The Fuck Is The Rooster?”が同時発売だったもんだから、すわ、ルースターズ復活か!?ってことでそっちに話題が持っていかれて、同じく、地味の100乗みたいな状況で。

まぁ、確かに話題性のあるモノに便乗できるならばそっちのほうが制作資金を引っ張りやすかったり、メディアにも露出しやすい、っていうのは良くわかるし、ジャーナリズムを受け取る側として、真に知りたい話題は?と問われたなら俺だって「ルースターズに関する話!」って即答しちゃうわけだけど、正味な話、ソロ活動そのものに、もっともっと注目してほしいと花田氏本人は思っているんじゃないかな。

実際、この下山淳との対バンのLIVEでも、暗黙に期待されているルースターズ的なものは徹底排除して“Nowadays”の世界観で勝負してきた上、MCでは「フジロック任務より帰還しました」なんて呟いたり。「任務」ってことは、やはりと言うか、それほど能動的な意識は無かったんでしょうな。今月の“ロッキンオン・ジャパン”でのインタビューでありありとわかるように、程度の差はあれど、メンバーとしては所詮「大江慎也復活のご祝儀」程度のものであって、やたらと盛り上がっている受け手側・メディアとは深い深い溝があるし、それはきっと、もう埋まることはないのかもしれない。

そういった状況下で、件のボッタクリ・ボックス発売についてや、メンバーとしては、ほんのお遊びのつもりだった新宿LOFTでのシークレットLIVEなんかで「あんたら、俺らのファンちゃうんかい!?」ってくらい、強烈に非難轟々あびちゃって、散々に叩かれたもんだから、本人達の意識として、「ちょっとサービスしただけなのに、そこまで言われる合は無い!」って具合に、かなり強硬な気分になっているのではなかろうか。

井上富雄氏にいたっては、自身のBBS(04年8月27日(金)16時00分の投稿)で「ロッキンオンのインタビューまだちゃんと読んでないのですが、そのような事は言いました。まじで終わっているんです!」と発言、普通に「今の井上を見てほしいから・・・」とか普通の書き方をすればルースターズを聴くようなロック好き連中には「理解」はしてもらえるだろうに、「まじで終わっているんです!」と、激しく語気を強めるあたり、もう本気で嫌になってしまっているのがありありと伺えます。

それでいて、“ロッキンオン・ジャパン”での大江慎也の問題発言、「またルースターズをやりたい」なんていう、今度は「躁」じゃないのか!?って思えるほどの言葉が出たもんだから、前述のメンバーとファンの温度差に加えて、メンバー間の溝という僕らがもう一度「The Roosters」を体感するには、あまりにも高い高い壁が存在してしまっているのが悲しいくらいよく見える。

僕は正直、ホンネとして「またルースターズを見たい」とは思うけど、やっぱり各メンバー、それぞれがやりたい音楽を機嫌良く演奏できるのが一番だし、バジェット等、その環境を整えるための、伝家の宝刀としてルースターズの幻影をうまい具合に有効活用すればいいんじゃないかな。

そういった意味で、最近の花田裕之は伝家の宝刀に引きずられてはいるけど、作品・LIVEそのものはまごう事なき「絶品」であることは間違いないわけで、我々、受け手側も、そういった事情を踏まえつつ、現在の花田氏・各メンバーの音楽活動を楽しんでいけばいいんじゃないだろうか。


途中から話は大きく脱線して、各メンバーの発言なんかを拾いながらその関係性とルースターズの幻影との上手な付き合い方を妄想したわけですが、今回の花田裕之バンド、それこそ聴覚・視覚のみならず、触覚・嗅覚・味覚も含めた五感全てに訴えてくるような、楽曲のイメージが漂ってくる感じで、非常に良い演奏だったんですよ。家に帰った今はこうやって対象化してしまっているけど、LIVEの現場では本当に雰囲気が良くて、おいしくお酒をいただくことができました。こんなヒネクレた人間が言うのもなんですが、単純にお酒が進む音楽って良いですよね(^^)。妄想・理屈はともかく、まずは現在の花田氏ソロにも耳を傾けてみてください。



<参考LINK>

花田裕之 公式WebSite http://www.irc2.co.jp/hanada/
●下山淳 公式WebSite http://www.faith-group.co.jp/JunShimoyama/
井上富雄 公式WebSite http://www.cajun-moon.com/
The Roosters(z) Official Site http://roosters.jp
●A Young Person's Guide To The Roosters(z) http://kazya.fc2web.com/index2.html