●10/14“中島らも追悼ライブ うたって おどって さわいでくれ”@なんばHatch
 出)シーナ、鮎川誠、山口冨士夫町田康大槻ケンヂムッシュかまやつ
   石田長生、ルイスルイス加部、三上寛、南正人、チチ松村
   その他中島らも氏と旧知の劇団関係者、上方お笑い芸人、ギョーカイ人


なんとも実にねばっこくて濃厚な追悼コンサートでした。18時半ごろ開演して、終演したのがなんと24時ちょうど!ステージ上に誰もいない、純粋な意味での「転換」は全くなかったので、それこそ5時間半ものウルトラ長丁場ライブとなり、しっかり終電をスルーして、漫画喫茶泊してしまいましたがな。

そういう私自身は、らも氏の著作の代表的なものを読んでいた程度で、「ファン」と名乗れるようなものでもなく、音楽活動面はおろか、リリパット・アーミー周りの事情にも疎いためこの日のメインの客層である演劇系サブカルさんの中、見事に浮いてました(笑)笑いのポイント、LIVEのノリまで、もう違うのなんのって・・・!

そういう意味で、私にとっては“AWAY”なLIVEだったので、役者さん、作家、上方お笑い芸人によるトーク・セッションのレビューはその筋の方々にまとめていただくとして、自分のテリトリーである音楽的な部分での感想としては、何と言っても石田長生氏によるビートルズの“HELP!”のカヴァーが凄かった!思い描いていたロック・スター像と自らの扱われ方がかけ離れていくことに「助けてくれ!」と叫んだジョン・レノンのナンバーを、ボブ・ディランの“Knockin' On Heaven's Door”にのせて歌ったセンスに完全脱帽です。

まぁ、中島らも氏って、本人の意識や言行とパブリック・イメージがわりかし良いカタチで合致してた稀有な表現者だったように思うのですが、睡眠薬とかでラリるのは大好きでも、表現に昇華してしまう前段階、日常生活レヴェルとなると、鬱病による不眠症だとかで凄惨な状態にあったのはフツーの想像力があれば誰でもわかるとは思うんだけど、オーケンが“プカプカ”の替え歌で「大麻スパスパスパ〜♪」と歌ったりとか、「表現者」としての中島らもを意識して追悼していたミュージシャンが多い中、ロック系の中ではただ唯一、石田長生が「俺が不眠症のとき、らもさんにもらった睡眠薬飲んだら、3日間ずっと眠ってしまった!」とMCして、タイトルそのままに助けを求める“HELP!”を演奏するという憎い演出で本当にプライヴェイトな痛々しい部分に共哀の意を表していたのが印象的でした。

もちろん、明るく楽しい反社会的不良性も「表現者」としてのみでなく、中島らも氏個人の大いなる魅力であり、それに惹かれた人達が各界横断的に集まって、それぞれの芸で追悼しているわけですから、どの出演者の演奏もらも氏への愛情が溢れていないわけはありません。前述のオーケンの替え歌も単なるブラック・ジョーク以上の意味合いがひしひし伝わってくる名演でしたし、ムッシュかまやつ氏が「注射ピュッ!」と歌ったスパイダースの“恋のドクター”だって60年代のサイケ・ポップスが大好きな中島らも氏のツボを直球ドンズバで狙った選曲だったと思います。

そんな中で初めてあの山口冨士夫氏を観たのですが、彼が演奏したナンバーは何と村八分の“夢うつつ”!京都御所の公園でラリラリランのスパパハニャーしている情景を歌っている姿は塀の中と娑婆を行ったり来たりする生活で身につけた圧倒的風格とロック・ギタリストとしてのシルエットの美しさを感じさせる素晴らしい演奏だったと思います。

そして、最後に出演者全員で歌われたらも氏の“いいんだぜ”。はじめて聴いた曲だったのだが、「君がめくらでもいい 君がかたわでもいい 君がAIDSでもいい♪」という言葉はアブナイけれど、社会からドロップアウトしてしまった我々アウトサイダーたちへの情のあふれる最高のラヴ・ソング。演劇、文学、お笑い、音楽、それこそ現代サブカルの全ジャンルを制覇しているあの中島らも氏が単純に肯定してくれるのだ。いかなる変態趣味を持ったアウトサイダーでも安心するであろう大名曲である。これが、VTRのらも氏の声とギターに合わせて、全ての出演者がセッションするのだ。最高の伝説へと昇華されるであろうエンディングだったと思います。


音楽、特にロック系出演者のアクトについてまとめたわけですが、こんな濃いセッションが、音楽系のみならず、各業界の猛者によって繰り広げられて、こと演劇/お笑い方面に関しては、それだけで上方芸能界が網羅できるとんでもない人脈の中心人物だったという事実が歴然と提示されるなど、本当に各方面に才能を発揮していたことがわかります。しかしながら、何故か「マルチな才能」という雰囲気がしないのはひとえに不器用に言行一致のロックな信念を通していたからに外ないでしょう。

今頃気づいても遅すぎるのですが、ご冥福をお祈りします。
May Ramo's soul rest in peace.



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<参考LINK>

中島らも 公式WebSite http://www.age.ne.jp/x/ramo/
中島らも追悼ライブ 特設WebSite http://www.age.ne.jp/x/ramo/party.htm
石田長生 公式Site http://www.ishiyan.com